低圧電気取扱者とは?業務範囲や安全教育の重要性を分かりやすく解説

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電気を扱う仕事は「電気工事士」だけではありません。工場の機械操作や設備のメンテナンスなど、特定の業務で低圧の電気設備に触れる際に必須となるのが「低圧電気取扱者」です。この記事では、その役割や業務範囲、なぜ必要なのかを、専門家でない方にも分かりやすく解説します。


低圧電気取扱者とは?電気工事士との違いと必要性

「低圧電気取扱者」は、実は資格免許ではありません。労働安全衛生法に基づき、事業者が労働者に対して行う「特別教育」を修了した人のことを指します。感電などの労働災害を防ぎ、安全に作業を行うための知識と技術を習得することが目的です。まずは、よく混同されがちな電気工事士との違いや、なぜこの特別教育が必要なのか、基本的な部分から理解を深めましょう。


電気工事士とはここが違う!低圧電気取扱者の位置づけ


電気工事士と低圧電気取扱者の最も大きな違いは、その目的と根拠法にあります。電気工事士は、電気工作物の安全な「工事」を行うための国家資格であり、電気工事士法に基づいています。一方、低圧電気取扱者は、労働者の安全を守るための安全衛生教育であり、労働安全衛生法に基づいています。簡単に言えば、電気工事士は「工事をする人」、低圧電気取扱者は「安全に(充電された状態で)電気を取り扱う人」と区別すると分かりやすいでしょう。


なぜ必要?労働安全衛生法で定められた「特別教育」の義務


事業者は、労働者を危険または有害な業務に就かせる場合、その業務に関する安全衛生のための「特別教育」を行わなければならないと、労働安全衛生法第59条第3項で定められています。そして、労働安全衛生規則第36条第4号にて、低圧(直流で750V以下、交流で600V以下)の充電電路の敷設や修理の業務、または充電部分が露出している開閉器の操作の業務などが、この特別教育の対象業務として具体的に挙げられています。つまり、対象業務に従事させる従業員にこの教育を受けさせることは、法律で定められた事業者の義務なのです。


どんな人が対象?具体的な業務内容の例を紹介


低圧電気取扱者特別教育が必要となるのは、電気工事士でなくとも、業務上、低圧の電気設備に触れる可能性がある全ての人です。例えば、以下のような業務が挙げられます。


工場の生産ラインで、機械のメンテナンスや点検のために配電盤のスイッチを操作する

ビルメンテナンス業務で、分電盤の点検や操作を行う

設備のトラブル時に、テスターなどを用いて充電している電路の電圧を測定する

太陽光発電設備の接続箱(接続部が露出している場合)を開けて点検する このように、意外と多くの職場で必要とされる重要な安全教育なのです。



低圧電気取扱者特別教育で何を学ぶのか?

では、具体的に「低圧電気取扱者特別教育」ではどのようなことを学ぶのでしょうか。この教育は、感電災害を防ぐための実践的な知識と技術を習得することを目的としており、法令で定められたカリキュラムに基づき、学科教育と実技教育が行われます。ここでは、その主な内容をご紹介します。


主な学科教育の内容(7時間以上)


学科教育では、電気を取り扱う上での基礎知識や危険性、関連する法律などを学びます。主な内容は以下の通りです。


  • 低圧の電気に関する基礎知識(1時間):電気の基本的な性質、オームの法則、感電の危険性など。
  • 低圧の電気設備に関する基礎知識(2時間):配線器具、分電盤、電動機、保護装置などの構造や役割。
  • 低圧用の安全作業用具に関する基礎知識(1時間):絶縁保護具(絶縁手袋など)や検電器などの正しい使用方法や保守管理。
  • 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法(2時間):感電を防ぐための具体的な作業手順や注意点。
  • 関係法令(1時間):労働安全衛生法や関連規則の中の、電気作業に関する条文。


主な実技教育の内容(7時間以上 ※)

実技教育では、学科で学んだ知識を元に、より実践的な訓練を行います。


  • 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法(7時間):実際に配電盤などを用いて、充電状態での開閉器の操作や、テスターでの電圧測定、安全な作業手順などを体験的に学びます。


※ただし、業務内容が「低圧の充電電路のうち、充電部分が露出している開閉器の操作の業務に限る」場合は、実技教育は1時間以上に短縮されます。


教育を受ける方法と時間・費用の目安

低圧電気取扱者特別教育は、一定の要件を満たした講師を招いて企業内で行うか、外部の登録教習機関(例:技術技能協会、労働基準協会など)が開催する講習会に参加して受講するのが一般的です。講習は通常2日間かけて行われ、費用は受講する機関によって異なりますが、1万円台半ば~2万円程度が目安となります。企業の安全担当者は、業務内容に合わせて計画的に従業員に受講させる必要があります。


低圧電気取扱者が「できること」と「できないこと」

低圧電気取扱者特別教育を修了したからといって、全ての電気作業ができるわけではありません。安全を確保するためには、その業務範囲を正しく理解しておくことが極めて重要です。ここでは、具体的に「できること」と「できないこと」を明確に区別して解説します。


これができる!具体的な業務範囲をチェック

低圧電気取扱者が行うことができるのは、感電の危険性が高い特定の「電気の取り扱い」業務です。具体的には、以下のような作業が挙げられます。


  • 充電部分が露出している開閉器(スイッチ)の操作
  • プラグや接続器の接続・切り離し作業
  • 低圧の充電電路の活線状態を調べるための検電作業
  • 充電中の電路や設備の点検・保守作業 これらの作業は、電気工事士でなくても、特別教育を受ければ安全に行うことが認められています。


これはできない!「電気工事」との明確な線引き

一方で、低圧電気取扱者が絶対に行ってはならないのが「電気工事」です。電気工事士法で定められた電気工事は、電気工事士の資格がなければ行うことができません。具体的には、以下のような作業は電気工事に該当します。


  • 壁や天井に電線を配線する工事
  • コンセントやスイッチを新設・増設・交換する工事
  • 分電盤を設置・交換する工事
  • 電気機器の電源コードを途中で切断し、別の機器に接続するような改造 これらは「取り扱い」ではなく「工事」であり、明確な資格が必要です。


なぜ業務範囲の理解が重要なのか?~法令遵守と安全のために~

業務範囲を正しく理解し遵守することは、二つの大きな理由から非常に重要です。一つ目は、言うまでもなく「安全の確保」です。業務範囲を超えた不慣れな電気工事を行えば、重大な感電事故や火災を引き起こす直接的な原因となります。二つ目は、「法令遵守(コンプライアンス)」です。無資格で電気工事を行えば、電気工事士法違反となり罰則の対象となります。事業者も労働者も、それぞれの役割と責任、そして業務範囲を正しく認識することが、安全な職場環境の第一歩なのです。



【まとめ】低圧電気取扱者は職場の電気安全を守るキーパーソン

ここまで解説してきたように、低圧電気取扱者は、電気工事士とは異なる立場で、工場の生産ラインやビルメンテナンスといった様々な職場の電気安全を支える重要な役割を担っています。電気の危険性を正しく理解し、安全な取り扱い手順を身につけることで、感電という重大な労働災害を未然に防ぐことができるのです。


低圧電気取扱者の重要ポイントをおさらい

この記事の要点を改めて確認しましょう。


低圧電気取扱者は、国家資格ではなく、労働安全衛生法に基づく「特別教育」を修了した人のこと。

その主な目的は、労働者の感電災害を防止すること。

充電部分が露出した開閉器の操作などはできるが、配線やコンセント増設などの「電気工事」はできない

対象業務に労働者を就かせる場合、事業者は特別教育を受けさせる義務がある。


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